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「おい。
どこだ?」
起き上がって声をかけると ネコはバスルームから静かに
姿を現した。
「シャワーでも浴びてたのか?」
笑いかけると「ごめんなさい」とでも言うように 上目遣いに
見つめ返してきた。
なにをしてたのだろう…
「…なんだ。
オシッコか。」
バスルームのタイルの上に レモン色をした水たまりが
出来ていた。
「水で流せるから 気にするな。」
こういう躾をされたネコなのだろう。
出もの腫れもの所構わず…ではないことは ありがたい。
だけど…
「ウンコもここでするのか?」
それはちょっと いただけない。
俺が言うとネコは 玄関のドアを見つめていた。
外でするという返事か?
それとも 外に出たいと言っているのか?
女はデリケートだからな。
「お嬢さん。
散歩にでも行くか。」
ドアを開けて外に出ると ネコは数歩後をついてきた。
商店街で買い物をしても 本屋で立ち読みをしても ネコは
店の中へは入って来なかった。
入ってはいけない場所というものを 知っているらしい。
俺が店から出る度に どこからともなく現われて 数歩後を
ついてきた。
一度だけ 道の向う側を歩いているのを見た。
アイツもアイツなりの 用を足しているのだろう。
だけど ウィンドウを見ながら歩いている気がしたんだよな。
ウィンドウ・ショッピングでもしているかのように…
俺はかまわず歩き出した。
ペットショップの前を通りかかって 足を止めた。
いろいろな動物の 入り混じった臭いが鼻をつく。
「ミルクだけじゃ 待遇悪いよな。」
キャットフードの缶詰を買った。
入り口の近くの 色とりどりの首輪が目に付いた。
俺のネコじゃないけど…
ためらう気持ちもあったが 赤い首輪を選んで買った。
「アイツに似合うよな。」
女にプレゼントでもするかのように ウキウキとしている俺に
店のオヤジが怪訝な顔をしていた。
店を出て部屋へ向かう俺の数歩後に ネコの姿はなかった。
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