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すっかり乾いた毛がふくらんで 愛らしい姿になっていた。
真っ白な羽根のように柔らかい毛をなぜると うれしそうに
ノドを鳴らして擦り寄ってきた。
ミルクを取りに行っている間も この未知の世界を探検する
でもなく じっと座っていた。
ネコは好奇心の塊みたいなものじゃないのか?
「お前 行儀が良いな。」
満足気に顔を洗うしぐさは どこから見てもネコそのものでしか
ないのに なにかがおかしい。
なにがおかしいのだろう…
鏡だ。
このネコは 鏡を見ながら顔を洗っているぞ。
一舐めごとに目を上げて鏡を見ている姿は まるで女が鏡の前で
髪をとかしているかのように見えた。
…そう見えるだけかもしれない。
いいや。
あきらかにアイツは 意識して鏡を見ている…
鏡の中で目が合うと ネコは近付いてきて 俺の膝の上で眠って
しまった。
眠っているネコに気を遣ったわけではないが テレビのボリュームを
少し落として見ていた。
そういえば 死んだバアさんが言ってなかったか?
『ネコに鏡を見せると化けて出る』
俺が見せたわけじゃないぜ。
アイツが勝手に見てたんだ…
迷信を恐がる歳かよ。
そのうち俺も ウトウトと眠ってしまったらしい。
白い服の女と 夕陽を見ていた。
長い黒髪がつややかに 緑がかって見えた。
大きな目が印象的で美しい…
色白の頬が 夕陽に紅く染まっていた。
俺は彼女の横顔だけを見ている。
彼女が俺の方を見て フッと微笑んで…
スーッと消えてしまった。
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