「絶対 ひいきだ」
そんな声が聞こえる。
これは私に向けられている言葉なのだけど。
愚かだとしか思えない。
そんな考えしかできない彼女を 憐れにさえ思う。
私がなにをしたわけでもなく 先生が私をひいきしているはずも
ないのに 彼女にはそうとしか感じられないらしい。
服装検査で私が見過ごされたから。
数学で私がトップをとったから。
先生が教科の進行を私のノートでチェックするから。
美術の先生が個展の彫刻のモデルを私に頼んだから。
私の感想文がコンクールに出品されたから。
その都度 同じ言葉が聞こえてくる。
…かわいそうな人…

面と向かっては言えないから あさっての方を見た罵声がとぶ。
本人は気付いてはいないだろうけど それは心のうしろめたさの
表われだと私は思う。
だって自分が正しいことを言っているのなら ちゃんと目を見て
言えるでしょ?
自信がないから それができないのよ。
それでも言わないと気が収まらないから 誰に向けるでもなく
荒い声を発しているだけ。
まるで動物の遠吠えと同じ。
「影でグチグチ言っていないで 面と向かってはっきり言ったら」
そう怒鳴りたくなってくる。
だけどそれじゃ 彼女達となんら変わらなくなってしまう。
だから私はなにも言わずに 心の中でせせら笑っているだけ。
そして同情までしてさしあげているわけ。
私は悪くないと確信しているから 逃げる理由もないし それが
わからない相手には なにを説いても無駄だと思うもの。
彼女の方も それ以上の攻撃は仕掛けてはこない。
そんな勇気も持っていないらしい。
しかも罵声できるのは まわりに群れの仲間がいる時だけ…
そんな彼女が友達の仮面をかぶって 近付いてくることがある。
「ノートかして」
「宿題見せて」
私は個人的に怨みを持っているわけでもないし かといって親しく
したいとも思ってはいないけど 断る理由もなさそうだから
快く了解する。
けれどもこれは ささやかな復讐になるのかしら?
だって 決して彼女のためにはならないことだもの。
だけど私がそんなことを考える義理はない。
報いを受けるのは彼女自身。