「お前 図鑑が欲しくないか?」
「いらない。」
「蝶々がいっぱいついたやつだぞ。
 あの蝶々の名前も わかるかもしれないし…」
「僕 知ってるもん。
 それにあの蝶々は 図鑑になんか載っていないよ。
 それよりパパ…
 僕 もう一つ蝶々が欲しいんだ。」
「もう一つ? 標本が?」
「うん。」
写真よりも本物が欲しいわけか。

「今度 蝶々を採りに行くか?
 自分で標本が作れるんだぞ。」
「イヤだよ…
 かわいそうだもん。」
「だってお前 標本っていうのは…」
「パパ 早く。
 お店が閉まっちゃうよ。」
なぜだ?
蝶々がかわいそうだと言いながら なぜ標本を
欲しがるんだ?

「坊や いらっしゃい。」
「おじさん 水色の蝶々は?」
「水色のはこれと…」
「違う。 他のは?」
「確か奥の方にあったな。
 坊や ちょっと待ってて。」

「これにしないか。 大きくてきれいだぞ。」
「ダメだよ。
 僕は水色の蝶々が欲しいんだ。」
「どうして?」
「…どうしても…」

   キミだね。
   恐がらなくても良いんだよ。
   僕と一緒に来てくれたら 大丈夫だよ。