「他にどんな方法があったというの?
 愛人が妊娠しました。
 だから離婚して下さい。
 …そんなことが あなたに言えるの?
 私だって…
 私だって つらかったのよ。」
「つらいのは俺も同じさ…」
いいえ。
あなたには決してわからない痛みだわ。
「…あとで連絡する。
 ゆっくり休んでろ。」
そうやって あなたは帰って行く人なのよ−

男の子だったんじゃないかって 漠然と思う。
二度と経験したくはないと思った つわりの苦しささえ
なつかしく思う。
つわりから解放されたと同時に あなたの存在もないと
いうことに気付かされるの。
ごめんね…
それしか言えない。
小さな小さなあなたの命を この世に出してあげられなくて
本当にごめんなさい。
あなたを産んで育てていくには 私はあまりにも子供すぎたの。
二十一歳の私には…
私一人では どうしようもなかったことなのよ。
もっとちゃんと恋をしていたら 別な結果があったかもしれない…
あなたの父親になる人が−
いいえ。
人のせいにはできないわ。
やっぱりこれは 私の責任。
私の罪だわ…

私はなにをしようとしているのかしら。
わからない。
だけど…したいとか したくないとかじゃなくて しなきゃいけない
気がするの。
こうした方が良いんじゃないかって思う。
私の指は なんのためらいもなく ガスの元栓をひねっていた−