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「来週の土曜日 表通りのRで待ってる。」
彼からメモを受け取った。
突然のことに 一瞬頭の中が空っぽになった。
つとめてなにげなさを装って席に戻り 数日前のことを
思い出していた。
仕事に区切りがつかなくて 残業した日のことだった。
「ご苦労さん。
まだ終わらないのか?」
「いえ もう終わるところです。
まだいらしたんですか?」
「ちょっと忘れ物をして…」
机で探し物をしている彼を後に 私は席を立った。
「それじゃあ お先に失礼します。」
部屋を出ようとした私を 彼が呼び止めた。
「あ、途中まで送っていくよ。
すぐ行くから車で待っていてくれ。」
私は彼からカギを受け取り 駐車場へと向かった。
後悔はしてないけれど…
みじめだというか 愚かだというか 自己嫌悪に陥りそう。
「私のこと嫌いでしょ」
…なんて 答えようもないことを聞いたりして。
きっと そんなことは考えてみたこともないと思う。
彼にとって私は その他大勢の一人でしかなく 好きとか
嫌いとかの 恋愛感情を感じる存在でも
ないだろうし。
一人の女として 特別な感情を持っていてくれるなんて
ありもしないこと。
それなのに…
「俺がお前を愛してどうなる?」
…どうにでもなるじゃない。
私は 彼が 好き。
だから 彼がその気で考えてくれたら どうにでもなる
じゃない…
ただの冗談としか 受け止めてくれないのよね。
彼から見れば 私は子供で恋愛の対象にもならないんで
しょうね。
どうにもならない…
それが 答えなんですね。
好きでも嫌いでもないなんて…
何とも思われていないよりは いっそ嫌われている方が
良かった。
嫌いだって感じてもらえる分だけでも 想われたいのに。
彼のことが とても気にかかる。
なぜか ときめいてしまう。
私も案外 純情なもので…
話をしただけで 赤面したりしている。
彼を 愛し始めている。
でも あの人はダメ。
愛しては いけない人。
わかってる。
わかってはいるのだけれど…
私の心は 一人歩きをはじめてしまった。
奥さんのいる人を好きになったのではなくて 好きになった
人に たまたま
奥さんがいただけで…
…なんて言い訳してみても 結局は同じことなのに。
また どうにもならない恋を はじめようとしている。
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