素顔になれる夜に包まれて 君の静かな寝顔を 今まで何度
見つめたことだろう。

夢の中にいても 俺のぬくもりをさがす指先が 愛しかった。
一枚の写真のように よみがえる日々と夢の中で 君を泣かせた
ことを 何故か思い出している。

今 鮮やかに時間を旅してるように…

変わらないのはふたりのまなざしで 守りたいのは君の微笑みだった。
どんな疲れも傷も ふたりが見つめあう時に 心から消えると
思っていた。

笑うときはふたりだったのに 生きるときはひとりなんだね。
心の奥深く 痛みを隠して…
心により添う君がいたから 優しく きっと強く 喜びや悲しみを
くりかえして日々 
生きていられたのだろう。

風が変わった。
白い椅子へと崩れ落ちるように 体をしずめた。
君がタラップを 昇った頃だろう。
俺はこれからの時を…
長い旅のような これからの時を 後悔に堪えていくのだろうな。
君を追いかけたかった気持ちと 追いかけてはいけないという
気持ちの狭間で 追いかけられなかった自分を…


君はどんな気持ちで 旅立つのだろう…
むこうみずな瞳で「明日などいらない。」と うそぶいていた日々が
なつかしい。


何も飾ることなんかないんだ。
俺は 俺に戻ろう。
人波に逆らっても かけ引きはしたくない。
傷ついたってかまわない。
俺は 俺を生きよう。
なにも迷うことなんかないんだ。
右足をまた 踏み出せば良い。

まるで別れるこの日のために 出会ったような気さえする。
あの暖かかった六月の空が ずっとむこうにあるようだ。
それを窓のむこうに眺めているだけの君と その君を眺めている
だけの俺。

とぎれた声と おもいで色をつなぎあわせて 今の淋しい空を
バラバラにしてはめ込んでみたい。

ジグソーパズルのように…

涙より君のジョークが 心を揺さぶる。
悲しみは一時のもの。
涙のように いつか乾いてゆく。
けれど 心まで乾いてしまわぬように 遠い街で祈っていよう。
青く明けてゆく空の下で かすかに甘い寝息に包まれて 心まで
眠れるように…