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新しい電話帳が届いた次の日 あるはずがないと思いながらも
彼の名前を探してみた。
五三八ページ…
同姓同名がいるはずもない名前が そこに記されていた。
メモがいらない程 繰り返して見た番号と住所。
ためらいながらも かけることができたのは二週間後だった。
七回のコールの後の留守番電話のメッセージが ただ虚しくて
淋しかった。
私はなにを期待していたのだろう…
同じ街に暮らしていながら 今まで偶然ばったり会うことも
なかった。
だけどもしかしたら…という可能性を胸に 電話帳の住所を
頼りに 車を走らせた。
神様が気まぐれに 悪ふざけをしてくれたら 彼に会えるかも
しれないと思っていた…
目的の場所にあったのは マンション程も大きくはなく…
アパート程も小さくもない建物だった。
このどこかの一室に 彼の生活の場がある…
駐車場に車を止めて 暮れゆく空の鏡となる 夕陽に染まった
部屋の窓を眺めていた。
「やっぱりお前だったのか。」
…あれから何年経ったのだろう…
偶然 街で会った時 声をかけてくれたのは彼の方だった。
隣に寄り添う彼女とは対照的に 彼は私に微笑んでくれていた。
あの笑顔は今でも変わらずに 残っているのだろうか―
あれを最後に ただの一度も起きなかった偶然を 今は心から
望んでいた。
今ここで 彼に会えることを望んでいる自分がいた。
すっかり陽が暮れて月の影が見えた頃 私は車を走らせた。
もう偶然には頼らない。
神様の存在も信じない。
…そう思いながら車を走らせた。
でも次の瞬間 全ての考えを否定した。
私と入れ違いに入ってきた車の運転席に…
ずっと忘れられない彼の姿を見た。
会いたくて会いたくて どうしようもなかった彼の姿を見た。
信じられないという面持ちで 見つめ返してきた彼が車を
止めた。
「やっぱりお前だったのか。」
あの日と同じセリフが 私の耳に届いた。
「ずっと会いたかった… 元気だった?」
心に浮かんだ言葉も 私の口からは出てきてくれなかった。
ただうなづくのが精一杯で―
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